STORY 家づくりストーリー

特別編|枚方高校へのあふれる母校愛で実現。先輩から10代の感性に伝えたい空間体験。

設計:樋口 真司 × IFA | 施設リノベーション

新築注文住宅、戸建てリノベーション、マンションリノベーション…
枚方を拠点に建築家とわくわくするような家づくりをご提供するIFA住宅設計室。
今回は家づくり…ではなく、枚方高校出身のプロデューサー樋口による、枚方高校国際交流スペースづくりのSTORYをお届けします。
竣工半年を経て、枚方高校寳田校長と藤本先生のもとへ、樋口とアシスタントの中井が訪ねました。
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STORY 01

プロジェクトのきっかけ

ガラスショーケースの入れ換え相談から、一大リノベーションへ

枚方高校国際交流スペースは、ほんのささいなきっかけと大きな熱意から、
どんどん話が膨らみ実現した、想いのこもった空間です。

はじまりは藤本先生から樋口への
「表彰状などを飾る棚を買い換えたいんだけど、どこで買えるかな?」という相談でした。

令和4年に創立60周年を迎えた枚方高校では、クラブや個人の活動などの表彰状やトロフィーを飾るショーケースを、
新しく安全なものへと入れ換えを検討していました。

STORY 02

IFAとの出会い

母校である枚方高校

『ひらこう』の愛称で親しまれる枚方高校。

平成4年に国際教養科を創設し(現在の国際文化科)、海外の学生たちと海外、国内で交流したり、
枚方高校の生徒宅がホストファミリーとなって留学生を受け入れたりと、多様な国際交流の実績を重ね、
世界を視野に様々な分野で活躍できる人材を育成すべく、特色ある教育を推進されています。

実は、IFAを創業した前代表の菊井夫妻と建築家の交久瀬先生、
そして樋口は枚方高校バスケットボール部の卒業生です。

さらに今回のプロジェクトを担当してくださった、
現バスケットボール部顧問の藤本先生もまた同じバスケットボール部OBであり、
樋口の2コ上の先輩であり、IFAで家づくりをしていただいたお施主様でもあります。

さらに10年前の50周年記念事業で卒業生有志の皆さんと取り組んだ枚方高校のセミナーハウスのリノベーションは、
交久瀬先生×IFAで設計、施工をさせていただきました。

枚方高校とIFAは様々なご縁が重なり、地域貢献の一環として様々携わらせていただいています。


写真左/セミナーハウスの内観
右/セミナーハウスの外観

STORY 03

卒業生・樋口の想い

多感な時期を過ごす学生たちを想い、わくわくしながら建築空間を描く

さて、ショーケースの相談を受けた樋口。

検討を進める内に、OBとしてデザインを通して母校に貢献したいという思いがふつふつと湧いてきます。
ショーケースを含めた空間の提案はできないものかと、スケッチをはじめました。

大学で建築を学び、スーパーゼネコンで設計職に従事した後、IFA住宅設計室でプロデューサーとしてお客様の家づくりに携わる樋口。
「私自身が高校生の頃、デザインされた建築空間に触れたという記憶がほぼないことに気付き、身近にそのような場所が学校にあったら、10代の感性にどれだけ響くだろうか…と何だかわくわくしてきまして。
デザインされた建築空間に高校生が身を置き、自身を取り巻く環境への関心を高める契機となるような、
特色ある〈空間〉の提案をさせて欲しいと、
イメージパースにあるようなショーケースを含めた一体的な建築空間を提案させていただきました。」

枚方高校で過ごす学生たちに、デザインされたこだわりの空間や、本物の素材に触れる機会を提供したい。
感性豊かな10代の学生たちがそれらに触れる価値はきっと大きいはず…。

そんな母校愛がショーケースだけでなく、スペース全体のリニューアルへと駆り立てました。


写真左/提案当初のスケッチ
右/IFA住宅設計室のギャラリーにて、通常業務の合間を縫って作図する樋口。それは仕事を終えた後、夜遅くまで続くことも。

STORY 04

プランのご提案

展示とコミュニケーションのための空間に生まれ変わった"国際交流スペース"

樋口の熱い想いを「えっ…」と少々驚いて受け取ることとなった藤本先生。無理もありません。

それでも「これはおもしろいね…」とその想いに応える形で学校へも働きかけてくださり、
結果、学校も温かく受け入れて下さることとなりました。

かくして、それまであまりうまく活用されずにいたスペースが、
『国際交流スペース』として展示とコミュニケーションのための空間に生まれ変わりました。
壁面には在校生や訪れたOBが語り合い、過ごせるベンチも備えられています。

「この空間が今の学生とOBにとって枚高のシンボルのような空間となりつつあり、
現役生は活動実績を表彰される喜びを知り、OBの方は展示を見ることで頑張った高校時代にいつでも戻れるような、
そんなアイデンティティを感じる場になっているんです。」
と、とても喜んでくださった寳田校長。

ショーケースには表彰状に加えて、海外留学を経験した生徒が訪れた国々で購入したお土産の展示などもされ、
枚高生の多様な活動に触れることができます。

STORY 05

リノベーション

BEFORE→AFTER

正面玄関横で活用が模索されていた空間は、交流スペースとして再生するにはうってつけの場所でした。


写真左側/改修前の様子
右側/竣工時の様子

STORY 06

デザインのこだわり

季節によって変化する陰影を感じ、落ち着いた静けさをまとう空間に。

最大の特徴は3つのR(アール)でできた天井。外からの光が時間によって、
季節によって変化する陰影を感じられるような空間を目指しました。

少し薄暗く、しっとりした陰影があって、落ち着いた静けさを感じてもらえるような空間です。
変更ができない既存の窓サッシと新たな空間が接する窓廻りのデザインには腐心しました。

そして、仕上げ材はIFAが普段のお客様との家づくりでも大切にしている無垢の素材にて。
壁と天井は漆喰、床はタイル、様々な樹種の無垢板材でベンチ、扉、窓台、建具を設えています。

「学校などの施設はもちろん、家の中でも安価で大量生産ができるその利便性から、
木目をプリントした合板を始めとした樹脂製の新建材(既製品)が当たり前に浸透しているため、
子どもたちの多くは無垢材(=本物の木や石)に触れる機会が少ないのではないかと思います。
木本来の質感や温もり、樹種によって異なる硬さや色味を感じてもらって、
昔の木造校舎で皆が触れてツルツルになった木製の手すりのように、肌の記憶に残る体験もしてもらいたいです。」
と、素材選びへの想いを語る樋口。

ショーケースの内のデザインアクセントとベンチの座面には無垢の梁材を。
ベンチの背面と足下の幕板には無垢フローリングを。

実際にIFAの家づくりの現場で使用する材を用いるなどして、
予算の関係上コストを抑えながら、それでも無垢の存在感を感じられる素材を選びました。

無垢の梁材は反りも生じるので、接合部は大工の技量が求められます。あえて厚みのある材を用い、
しっとりした手触りと、どっしりとした無垢ならではの安心感を生んでいます。


写真左上/建具のデザインで既在窓から入る光を調整
右上/光の流量を調整できる建具
左下/この隙を開けるのがミソですよねと鋭く気付く寳田校長
右下/木製で温かみを感じるショーケース

STORY 07

工事中の思い出

在校生との触れ合いも楽しみのひとつでした

実はこの空間、IFAのスタッフが漆喰塗装を手掛けました。
塗装作業や管理のため頻繁に通っていた樋口。現場での在校生との触れ合いも楽しかったそうです。

「教員の先生は勿論、在校生の皆さんも興味を持ってくださっていて、現場の前を通る時には元気に挨拶をしてくれるし、
「ここは何になるんですか?」と声を掛けてくれる生徒さんもたくさんいて…嬉しかったですね。」と語ります。

高校時代は自己表現に苦しんだと苦笑いするOB樋口。
在校生の皆さんたちの眼に、ステキなOBとして映っていたら嬉しいのですが…。

ちなみに日頃デスクワークの中井は、塗装で相当な筋肉痛を経験したものの、とても楽しかったそうですよ。


写真左/IFAスタッフ有志で漆喰作業
右/仕上げ面を整える樋口

STORY 08

空間の価値

在校生とOB、世代を越えて双方の想いをつなぐ場に。

校長室から移動し、国際交流スペースで話が膨らむ3人。

3つのRによる天井デザインのモチーフとなった、
ルイス・カーンによるアメリカの名建築『キンベル美術館』について樋口が語りました。

IFAでは建築研究会と称して、毎年様々な名建築を訪れ学んできました。
「遊んでいるようですけど、仕事として真面目に学んでるんです。」と樋口。

それに対して寳田校長は、
「遊びってすごく大切なんですよ。もともと人間=ホモルーデンスというのは、遊ぶ人という意味です。
気候も含め実際の空気感まで肌身で感じることが重要ですよね。」と、
わざわざ現地を訪れる意味について大いに共感してくださいました。
日々学生たちの感性に触れ、そのすばらしい可能性を実感する校長先生ならではのお言葉です。

ベンチ上部の壁は、学生の皆さんが写真やメッセージを掲示したり、
文化系部活動の発表の場としたりと、自由に表現できる『余白』として計画。

インタビュー時は昨年の60周年記念の一環として、
1期生から60期生の思い出のスナップ写真が飾られていました。

ここに学生たちの成果が飾られることがモチベーションになったり、
展示によって歴史を感じたり、タイムマシンのように学生当時に遡ったり…。

この空間が様々なものをもたらしました。

OBの方々はみんないい表情になって帰られるそうです。
竣工式にもたくさんの方々にお越しいただき、ご提案したIFAとしてもとてもうれしいお話です。


写真左上/60年の歴史を感じられる写真展示を前に、会話が弾みます
右上/お引き渡し時の一コマ
左下/IFA建築研究会:アメリカ・シカゴ郊外のファンズワース邸
右下/IFA建築研究会:フィンランド・ヘルシンキのアアルトスタジオ

STORY 09

プロジェクトを振り返って

枚方高校の思い出の1ページに加わる空間として育てたい

最後に、校長先生に本プロジェクトを振り返っていただきました。

「枚方高校にこの空間があるのとないのとでは、大違いです。
木の素材、光や風まで考えてデザインされた、卒業生の想いが詰まった空間。
生徒たちも今はその価値を直接理解できないかもしれないけれど、
10年後、20年後また母校を訪れる際に戻ってくる場所ができたし、また記憶としても残っていくと思います。
あのうまく活用できていなかった空間に、こんな価値をつけてもらって、
先輩が繋いでくれたご縁に本当に感謝しています。」と寳田校長。

樋口にとっても、様々な思い出がある枚方高校。
建築に関わる卒業生として、少しでも恩返しできたかなと感じるプロジェクトでした。

今後このスペースは生徒会に託され、運営されていくそうです。
次は歴代の体育祭のスナップが展示される予定とか。使い方は無限大。

ぜひ在校生の皆さん、そしてOBの皆様の枚方高校の思い出の1ページに加わる空間として、
愛着を持って育てていただければうれしいです。
OBの皆様、ぜひ足をお運び下さい。

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