「おすすめの家具は?」
とよく聞かれます。お勧めはたくさんあるのですが、何の制約も無ければボーエ・モーエンセンの家具と答えます。
ボーエ・モーエンセンとは北欧ミッドセンチュリー期の家具マイスターです。画像は私が自宅で愛用しているイージーチェア2256です。形、各部寸法のバランスが秀逸で、腰をかけた時の緩く包み込まれる感覚も心地良いのです。
モーエンセンの家具は、同時代のハンス・J・ウェグナーや、フィン・ユールなどと比べると輝くような派手さはありません。一見無骨に見えますがよく見ると、部材の接合や絶妙なカット、角度のとりかたなど、すべてにおいて周到にデザインされていることがわかります。
それでいて全体的には素朴な佇まいなのは、人との距離が程よくとれているからだと思います。近すぎず遠すぎない距離感。建築と人との関係もそうありたいと考えています。
「ところで、あなたのおすすめの家具は?」
建築家:井上昌彦 (2021年11月発行 IFA住宅設計室通信・建築家エッセイより)