注文住宅
2021年
PLACE:交野市
建築家
近藤 陽子
一級建築士/nLDK一級建築士事務所
奈良女子大学生活環境学部卒業、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科修了。竹中工務店設計部、阿久津友嗣事務所他設計事務所勤務を経て2017年にnLDK
一級建築士事務所を設立。奈良女子大学・京都市立芸術大学(-2020)・名古屋造形大学非常勤講師。
日本国内で建築する以上、地震や台風など災害のリスクは免れません。いかに災害に備えるか、と同時にその備えを無用の長物にせず、日常の豊かさにも寄与させたい、という想いで設計しました。
計画敷地は昭和40年代に山の裾野を開拓した住宅地であり、土砂災害のリスクがありました。当該敷地はイエローゾーンに当たるため、建築上の制限はありませんが、不安を少しでも払拭するためレッドゾーンで予想される土砂高さまでコンクリート基礎を設けることとしました。
一方、住人は長い時間を庭で過ごされます。そこで室内と庭の連続性を考慮し、また敷地南側の公園に植えられた桜の眺望にも配慮しました。
この2つの与件を「エンガワ」で実現しました。縁側は室内と庭を曖昧につなげる日本の伝統的な建築要素です。戦後はほとんど見ることがなくなりましたが、最近では省エネ指向から、外に開き自然エネルギーを取り入れる縁側が見直されつつあります。そこで本住宅では伝統的な縁側をアップデートし「エンガワ」として提案しました。
具体的には、地面より1メートルほどの高さまでコンクリート基礎を立ち上げ、その上にエンガワを作り、非常時には土砂を堰き止め、日常では雨や夏の日射を遮りながら庭へ大きく開き、室内と庭・公園をつなげます。また縁側の幅を伝統的なものより広くとることで、リビングのようで、しかし特定の用途は持たない、住人に生活の余白を提供します
自然を愛でるとともに畏怖の念を持つ、日本の伝統的な自然観を大切にしながら設計しました。